PROFILE

花咲く頃に。

 植物が美しい花を毎年咲かすのは何故だろう? きれいな鉢に植えられた者達だけでなく、人の寄り付かないような森の奥深くの者達でさえ、例外なく花を咲かせる。 彼らはその短い生涯の最後に次なる子孫を残し、そして花はまた咲くのである。 この脈々と受け継がれていく一連の流れこそ、彼らがこのブリタニアに生きていた証なんだと思う。 彼らが花を咲かすのは誰のためでもなく、ましてや花が咲くのを楽しみにしている人のためでもない。 それは彼ら自身のためなんだろうし、それがこのブリタニアの真実の1つなんだろうね。

 あたい達が住むこのブリタニアはたくさんの夢で溢れている。 己の力を誇示しようとする者、名声を得えようとする者、人々に幸せをもたらそうとする者など、実に多くの夢があふれている。 しかし、この世界には「対となる物が必ず存在する」という真実があり、ブリタニアに溢れている夢という光とは逆に、数多くの絶望という名の闇が潜んでいるんだ。 でも、その闇の中で生きていたとしても、決して恥ずべきことではないよ。 その闇でさえ、この世界の一部であり、この世界の真実の内の1つなんだから。

 あたいはシーフだ、光でも闇の世界でもない灰色の世界に住まう存在。 人の物を奪い、それで命を繋いでいる存在であり、人々から好かれるような存在では決してない。 だけどね、あたいはお金が欲しいからだとか、高価な物が欲しいからシーフでいるわけぢゃないんだ。 あたいが欲しいのは、あたいがこのブリタニアに生きていたという証だけ。 この世界に生きていた証を残そうとしたとき、あたいに残されていたのがこの灰色の世界に身をおくことだけだったこと。 人に好かれるとか嫌われるとかはあたいの気にする所ぢゃないんだ。 だけど、こんなあたいでも人の夢までは奪わない。 あたいはシーフ(Thief)でありロバー(Robber)ではないし、夢を奪われる辛さは自分でも知っているつもりだから。 だから自分の生き方には誇りを持っているし、それなりの自分のルールだって持っている。 たとえば、人の思い出や人の命を奪ったりしない、人の心を踏みにじったりしない、嘘をつかない、とかね。

 あたいはこの自分の運命を憎んだことは一度もない。 あたいは、今出来ることをやり、この灰色の世界を生き抜いていくだけ。 そして、例えそれが悪名だとしても、より多くの人にあたいがこのブリタニアに生きていたという証を残そう。 それまで、あたいは止まることは出来ない。 彼らがこの世界の真実をまっとうするように、あたいも真実をまっとうしよう。 そして、いつか、然るべき時になったら、このブリタニアの灰色の世界に、身を沈めよう。

 そう、花咲く頃に・・・。